そもそも社会保険って何?
大きくは「健康保険」と「公的年金」になります。
日本は皆保険制度といって皆が健康保険に加入しています。年金も20歳以上の方は必ず加入することになっています。
健康保険
市区町村が管轄している国民健康保険と、会社勤めをしている人が加入する健康保険(中小企業の場合は協会けんぽ)に加入します。
公的年金
20歳以上の方で会社勤めをしていない人(会社の社会保険に加入していない人)は、第1号被保険者として国民年金に加入します。会社の社会保険に加入している人は第2号被保険者として厚生年金に加入しています。
また、第2号被保険者の配偶者で社会保険上の扶養に入っている人は第3号被保険者となり、保険料の支払いは不要ですが、国民年金の保険料を払っているのと同じことになります。
この辺りを詳しく知りたい方は「公的年金制度の仕組みを知ろう」が参考になるはずです。
基本的に会社の社会保険には入ったほうがお得
まず原則的には社会保険には入ったほうがお得です。
その理由は保険料の負担にあります。
社会保険料というものは「」でも書いている通り、アルバイトの給料から差し引かれますが、実際に納めている金額はその倍です!半分は会社が負担しているのです。
その分、市町村の国民健康保険に加入するより実際に負担する保険料は安くつくうえ、さらに国民健康保険にはない様々なプラスの保証もあります。たとえば、病気やケガで会社を休んだ場合も「傷病手当金」という形で収入の一部が補償されます。
年金に関しても厚生年金という国民年金よりも将来たくさん年金が受け取れる年金に加入できるうえ、半分は会社が持ってくれているわけですので、損得を考えればお得です。くわしくは「厚生年金の特徴」なども役に立ちますのでぜひご覧ください(外部サイト)。
保険の種類 | 保険料負担 |
国民年金+国民健康保険 | 全額自己負担 |
厚生年金+健康保険 | 半分会社負担+半分自己負担 |
ちなみに、アルバイトを社会保険に入れない会社が多いのはこの「半額負担」を嫌っているからです。会社からすれば実際にはかなりの金額を負担しているわけです。
会社の社会保険への加入は有利?不利?
基本的には入ったほうがお得です。ただし、下記に該当するケースでは加入をすることでマイナスとなる可能性もありますので十分に配慮しましょう。
パートをしている妻の場合
年間のパート収入が130万円以下で配偶者が第2号被保険者(サラリーマン)
この場合、妻の社会保険料は事実上の免除となっています。そのため、勤務先の社会保険に加入をすると、その保険料分、収入の逆転現象が発生します。
基本的には社会保険には加入しないほうがお得です。
年間のパート収入が130万円を超える場合
社会保険に加入したほうがお得です。ただし、上記の配偶者が第2号被保険者(サラリーマン)の場合には所得の壁(130万円の壁)によって収入の逆転現象が発生します。年に200万円、300万円と稼ぐなら別ですが、130万円をちょっと超えたあたりという年収しかないというのであれば、素直に給料を130万円以下に調整したほうが良いかもしれません。
配偶者が自営業など第1号被保険者
社会保険に加入するの得です。
親の扶養に入っている大学生の場合
両親の健康保険(社会保険)に加入している可能性が高いです。そのため、このようなケースでは本人が負担すべき保険料は「国民年金保険料」のみです。
そのたえ、両親の扶養下にある場合は、会社の社会保険に加入しない方が保険料負担が少なくなる可能性が高いです。特にあなたが学生などである場合にはよくよく考えた方が良いです。
ただし、両親が自営業者などサラリーマンではない場合(第1号被保険者の場合)にはあまり関係ありません。素直に社会保険に加入させてもらった方がお得となる可能性が高いです。
ただし、「学生アルバイト代103万円の壁と両親の扶養から外れる問題」でも書いていますが、大学生で親の扶養下にある場合は社会保険以外にも所得税の面でも問題があります。この辺りも考慮したうえで働くようにしましょう。
なお、20歳未満の人は年金の加入義務はありませんが、たとえば学生バイトなどで社会保険に加入した場合は厚生年金保険料を負担することになります。
社会保険に加入する・加入しないは選べる?
結論から言うと、働き方によって加入の有無が決まります。
社会保険の加入義務は下記のようになっています。
- 1日または1週間の労働時間が正社員の3/4以上
- 1か月の労働日数が正社員の3/4以上
この両方を満たした場合、社会保険に加入する義務が事業所に生じます。
ですので、扶養下にあって社会保険に加入したくない!という方は上記以下の働き方をしたい旨を会社に伝えるとよいでしょう。
同時に年間の給料も130万円未満とすることを希望する必要があります。
会社側からすれば、従業員が社会保険に加入するということは、「保険料負担が少なくて済む」というメリットがありますので、社会保険に入りたくないというのは歓迎されるでしょう。 ただし、上記の条件を満たしているのに加入しないというのはNGです(とはいっても中小企業などでは実務上加入させない事業主も多いです)。
逆に、社会保険に入りたいのに会社が加入させてくれないというケースの方が問題ですね。このような場合は直接加入させてくれるように会社に訴えましょう。
それでも改善されない場合は社会保険事務所などに行って是正してもらうというのも手ですが、アルバイトという立場であればそういった会社は見限って別の会社で働くという選択肢の方が手っ取り早いかもしれません。
大企業で始まる106万円の壁
ちなみに、2016年からは一部の大企業で社会保険への加入条件が緩和されており、下記の条件を満たすことで社会保険への加入義務が生じることになります。
1.勤務時間が週20時間以上
2.1カ月の賃金が8.8万円(年収106万円)以上
3.勤務期間が1年以上見込み
4.勤務先が従業員501人以上の企業
5.学生は対象外
問題となるのは、上記の「年間のパート収入が130万円以下で配偶者が第2号被保険者(サラリーマン)」でパートをしている人です。
この人は実質的に健康保険料と年金保険料が免除されていたわけで、社会保険への加入ハードルが下がったことで、年間の働き方を106万円未満にセーブする必要が出てくるわけです。